5.ロルフィングと「筋膜」

ロルフィングの特徴として挙げられるのは、柔組織の中の筋膜のバランスに注目したことです。
「私たちの姿勢を維持しているのは、筋膜である。誰もこのことについて言わない。これまで注目されてきたのは、筋肉だけだ。」(アイダ・P・ロルフ)

 

人の形を作る「クモの巣」、筋膜

 

筋膜売られている精肉を見ると、ぬるぬるした白く 薄い膜で包まれています。

これが筋膜で、みずみずしくゼリー状で、伸び縮みし、弾力性があります。

 

  

 

  
    © Ron Thompson

筋膜は、3次元に張りめぐらされた「クモの巣」のように、全身くまなく広がる、伸縮性のある網状の組織です。

筋膜は、神経、内臓、筋肉など、全身のあらゆる器官を包んでその形と位置を安定させ、また包まれたものを保護しています


筋膜が固くなると、動きが不自由になる

 

筋膜は、日常の偏った身体の使い方、精神的・肉体的なストレス、事故、手術などにより、硬く縮んでしまったり、隣の筋膜とくっつき合ってしまうことがあります。

 

例えば、交通事故で首がむち打ちになったとしましょう。身体が準備しきれないほどの速い速度で、強い衝撃を受けて、首の骨(頸椎)をとりまく筋膜が、その衝撃のエネルギーを吸収します。

そして、首の筋膜は、固く短くなったり、隣接する筋膜と癒着することで、首を安定させます。ちょうど骨折したときの添え木のような役割を果たすわけです。

 

しかしこの時、筋膜は、安定性と引き替えに柔軟性を失っているため、事故に遭う前のようには首を動かしにくくなっています。

優しく伸ばせば、筋膜はまた柔軟になる

 

しかし、筋膜には、柔軟だった状態から固くなるのとは逆に、固く縮んでしまっても、そこから元のみずみずしい伸縮性のある状態に戻ることができる、という性質があります。

 

その回復のきっかけになるのが、ゆるやかで持続的な圧力です。

 

ロルフィングでは、手や肘を使って、柔軟性を失ったり、硬くよじれてしまった筋膜を、優しく押し伸ばして、あるべき場所に戻してやるのです。

全身に広がっていく、筋膜の固さ

 

では、そうやって首の周辺の筋膜が元のように柔軟になれば、以前のように首は動くかというと、そうはならないことが多いのです。


それは人の身体が、テンセグリティだからです。人は、柔組織=筋膜(※)の複雑な引っ張り合いで、全身でバランスを取っていました。
(※筋肉は筋膜に包まれていますし、腱・靱帯も結局筋膜の厚くなったものなので、ここでは、柔組織=筋膜とします。)


全身くまなく広がった3次元の網を、無数の小さな人間がひっぱりあっているところを想像してください。首で網を引っ張っていた人が、急にその力を強めました。すると、他の場所でひっぱっていた人は引きずられたり、あるいはそうされまいと対抗して、同じようにひっぱりを強くします。そうやって、全身の張力のバランスが崩れていってしまいます。


その結果、腰、背中、あるいは膝の筋膜が、ひっぱりが強くなる、つまり固く柔軟性を失うかもしれません。

筋膜の固さが、身体の機能を低下させる

 

あちこちの部分的な筋膜の縮みによって、身体がいったんバランスを失えば、動いていて身体がぎこちなく重たく感じるようになり、本来よりも浅い呼吸しかできなくなってしまいます。
そして同時に、肉体的・精神的な活動レベルも低下し、動きの効率性も下がってしまいます。

全身の筋膜を整えることの必要性

 

そのため、身体全体の筋膜のバランスに注意を向けることが必要になってきます。


先ほどの例で言えば、全身の関係する筋膜も柔軟にならない限りは、首の不自由さも解消されないでしょう。

痛みの解消のみを目的に、部分的な施術をしても、一時的な効果しか生まないことが多いのは、このためです。